緑の光線

「グリーン・フラッシュ(Green flash)とは、太陽が完全に沈む直前、または昇った直後に、緑色の光が一瞬強く輝いたようにまたたく、非常に稀な現象。緑閃光ともいわれる。地球の丸みに沿った大気によって、太陽光はプリズムによって曲げられるのと同じよう…

屋久島に降る「浮雲」の雨

我が妻は山登り(&岩登り)が趣味で、いや趣味というよりは、いわゆる“山屋さん”という種族に近く、休日ともなればどこかの山に出かけている。そんな彼女が今、屋久島に赴いている。九州の最高峰・宮之浦岳(1936m)登山が目的なのだが、2日前のメー…

小川監督との一夜

1980年代の後半、今にして思えば小川伸介監督の遺作となった「1000年刻みの日時計」という映画の自主上映に向けて、秋田市で試写会が行われたことがあった。その際、小川監督とチーフ助監督の飯塚俊男さんも来秋し、上映終了後、当時ぼくが経営していた飲み…

Tokyo Twilight

ちょうど1カ月ほど前、東京の新名所、六本木ヒルズへ行った。クリスマス前ということで、街は華やぎ、ものすごい人出。行ったころがちょうど夕暮時。まさに「Tokyo Twilight」。でも、ここで見られるのは小津映画の「東京暮色(Tokyo Twilight)」とは別の…

「恋恋風塵」の台湾

昨夜のBSで侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の『恋恋風塵』(1987)とアキ・カウリスマキの『カラマリ・ユニオン』(1985)が続けて放映された。小津安二郎映画特集に関連したラインアップなのだろう。2人とも自他ともに認める小津映画ファンだから…

「The Hours」とアイルランド

アイルランド8日目の朝。フィッツィモンズ・ホテルを6時半に出て、ダブリン空港へ。レンタカーを返し、出国手続きを済ませたあと空港内のカフェでサンドウィッチの朝食をとり、ロンドン行きのBLMでアイルランドを飛び立つ。ヒースロー空港は2度目というこ…

小津の浮草=真夏の燗酒

小津安二郎の『浮草』(1959年)は、大映での唯一の作品ということで、厚田雄春ではなくて宮川一夫の撮影、主な出演者は小津組常連ではない大映の役者。それらのコラボレーションが(松竹の)小津調とは異なった雰囲気を発散して、フィルムが妙になまめかし…

「東京画」を見る

TVで『東京画』(1985)を見た。W・ヴェンダースが小津へのオマージュを捧げた作品なのだが、私はちっとも感心しなかった。 パチンコ屋、ゴルフの練習場、竹の子族、食品サンプル工場…ガイジン(欧米人)が奇妙に感じる日本。それらが全編にわたり冗…

ヤンヤン夏の想い出

渋谷で妻と一緒に「ヤンヤン夏の想い出(「one&two」)」(エドワード・ヤン監督)を見る。 はじめはけっこうタルイ映画かなと思ったが、後半ぐっと引き込まれる。 特に場面が東京に移った時。外国人の撮った東京、日本人でこんなに心に沁みた映像は「サン・…

ザ・シェルタリング・スカイ―記憶の痛み

ベルトリッチの「ザ・シェルタリング・スカイ」のビデオを観る。普段、レンタルビデオを借りてくることはほとんどしないのだが、この映画は、去年、映画館で見逃して以来、気にかかっていた。 観終えると、「暗殺の森」「ラストタンゴ・イン・パリ」といった…

F氏への映画メール(4)/成瀬映画ほか

F様随分春めいてきました。 「キネマ旬報」ベストテン特集号のコピー送ります。ついでに『成瀬巳喜男の設計』と映画のビデオもいくつか。 この『成瀬巳喜男の設計』はインターネット古書店で見つけて新たに買ったもので、ぼくは初版本を持っています。全部…

F氏への映画メール(3)/アイズ・ワイド・シャット

F様ところで、F氏は当然もう観ていると思いますが、おれも先日「アイズ・ワイド・シャット」観ました。キューブリックは「自分の最高傑作」といっているらしいけど。どう思う? おれは、ウーン…。下敷きとなったノベルは19世紀末のウイーンが舞台らしい…

F氏への映画メール(2)/スタローンよりもトラボルタ

F様ゴダールの『映画史』は見られなかったけど、きっといい映画だと思う。ひとりよがりでつまらなくても。ゴダール映画に対してF氏が言う「若々しくて古くさい」は、言い得て妙。原将人も同様。それでもワシは許す。タルコフスキーとパゾリーニ、ユーモア…

 F氏への映画メール(1)/ラーメンよりも讃岐うどん

F様Y嬢とのメール交換、その後どうですか。博識なF氏のメールにレスポンスできるとはイケテル女性の証拠?佐野史郎の奥さんのように美人だったらいいのにね。彼女はイイよ。いつだったか2人でアラスカ旅行をするテレビ番組を見たんだけど、奥さんのほう…

サン・ソレイユの心地よさ

映画好きの友人のメールに、ルイ・マルの『死刑台のエレベーター』を見た感想として、「いちばんよかったのはジャンヌ・モローのモノローグでした。全編モノローグのみの映画なんてないのだろうか?」と書いてあった。そこで思い出したのがクリス・マルケル…

アクシデンタル ツーリスト

村上春樹の短編集『東京奇譚集』を本屋で手にとったら、冒頭に「偶然の旅人」というタイトルの短編が収められていた。このタイトルを見て、すぐに思い浮かんだのは『偶然の旅行者』(1988年、監督ローレンス・カスダン)というアメリカ映画。ウィリアム…

東京暮色のころ

小津映画についてこれまで幾百幾千のことが語られてきたので、私などの出る幕はないのだが、過剰なまでにヘンテコで細部に逸脱したところのあふれている映画なので、見終わったあとつい語りたくなってしまう。それが黒澤明の映画を見たあととの違いかな(あ…

『麦秋』の衝撃

小津安二郎の『麦秋』(1951年)を見たのは、今から30数年前、21歳ころのことだった。そのころ、東京銀座にあった名画座「並木座」で小津映画を集中的に見た記憶がある。『麦秋』が小津映画との初めての出会いであったのかどうか、はっきりしない。…

太陰暦の映画

成瀬巳喜男監督の1954年の作品『山の音』には、原節子が月明かりに照らされて井戸水を汲むシーンがある。水汲みを終わって原節子は「お母さま、美しいお月さま」と、義母役の長岡輝子に言う。9月から10月にかけて放送されたNHKBS2の成瀬巳喜男…

成瀬映画に浸かる

今、NHKBS2チャンネルで「成瀬巳喜男映画特集」をやっている。昨年の冬から春にかけて、秋田市立図書館のAVコーナーで成瀬映画のビデオが何本もあるのを発見し、すべて借りてすっかりハマってしまったのだが、まだまだ見ていない作品も多い。全89…

映画音楽 音を削る

《夢の引用》 「映画は、完結した様式というようなものではなくて、それだから幾ら映画を観ても、また同じひとつの映画を繰り返し観る愉しみというものも生じ、飽くことがない。もしかりに映画に完成された様式美というものがあったにせよ、その美しさは他の…

『シネマの快楽』を読み直す

本屋の文庫本コーナーで、最近はどんな本が出ているのかと背表紙だけを順繰りに眺めていて、『シネマの快楽』(河出書房新社)を見つけた。蓮實重彦と武満徹による映画談義、トーク集で、随分前にリブロポートから出ていたものを図書館から借りて読んだこと…

33年目の『旅の重さ』

昨年は成瀬巳喜男作品を借りてお世話になった秋田市立中央図書館のAVコーナーに、今度は溝口健二の監督作品でも見直そうと思って立ち寄ったら、何の気なしに手にとった『旅の重さ』(監督:斎藤耕一/1972年)を借りてきてしまった。この映画は封切り…

映画の中の民俗行事−『女中っ子』

きょう1月15日は小正月。数年前までは成人の日で祭日だった。私が在住している秋田県男鹿半島の全国的に知られている民俗行事−ナマハゲは、現在は12月31日の大晦日に行われているが、戦前までは小正月の15日夜の行事だった。これに関連して通称ハッ…

2004年回顧

今年(2004年)は映画館で一度も映画を見なかった。春に押井守の『イノセンス』を見ようとして映画館の前までは行ったことがあったのだが、運悪く(良く?)上映が終了していた。数えてみたら、この3年間で映画館(劇場)で見たのは、『あの子を探して…

たそがれ西部劇

前回のエントリーで「さすらいのカウボーイ」「ギャンブラー」「男の出発」を“たそがれウェスタン”と書いたが、そこからまたいつものように連想が広がり、60年代末から70年代はじめにかけて見た西部劇を思い出した。そういえば、あの当時製作された西部…

70年代の輝き−ディック・リチャーズ

好きな野球映画のことを考えていたら、『さらば愛しき女よ(FAREWELL MY LOVELY)』(監督:ディック・リチャーズ、1975)を思い出した。原作はレイモンド・チャンドラーの同名小説で、舞台は1941年のロサンゼルス。まったく野球映画などではないのだ…

私の好きな野球映画

大リーグ、シアトル・マリナーズのイチローが258本の安打を打ち、ジョージ・シスラーの持つ年間最多安打記録を84年ぶりに更新した時、球場に流れていた曲が、映画「ナチュラル」のテーマソングだったということを後になって知った。「ナチュラル」(監…

映画『馬』の民俗世界

図書館のAVコーナーにあった成瀬巳喜男作品はあらかた見終えたので、次はこれまであまり馴染みのなかった監督の映画を見てみようと、『馬』(山本嘉次郎監督)を借りてきた。高峰秀子扮する農家の娘が手塩にかけて育てた仔馬との離別をテーマにした194…

『按摩と女』を置いているビデオ屋があった!

かねてから邦画の品揃え日本一と聞こえていた東京恵比寿ガーデンプレイスのTSUTAYAにようやく行くことができた。イヤー、噂にたがわぬ充実ぶり。黒澤、小津、溝口などの巨匠作品は全タイトル揃えているようだし(ビデオレンタル禁止の成瀬作品だけな…